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「さあ、追い詰めたぞ。観念して盗んだものを返しなさい」
「ふん……」
怪人は脇に抱えた鞄をキツく抱きしめ、グリーンを鼻で笑った。
これはとある製薬会社の極秘研究資料。組織がこれを求め、怪人を差し向けた。
怪人は組織の命令通り、会社ビルから資料を盗み出すことには成功した。だが直ぐに緊急出動したグリーンに捕捉され、こんな場所まで追い詰められた。
あと少し、あと少しで任務達成だというのに、忌々しいヒーローめ。怪人はナイフを取り出してヒーロー任務向ける。
「邪魔するなら殺す」
「……やめろ。君には無理だよ」
グリーンは悲しげに呟く。
確かに怪人は戦闘向きではない。怪人は猿と合成され、常人離れした身の軽さを誇るが、攻撃力は低く、これといった特技もない。
足の速さには自信があったが、グリーンは容易く怪人に追い付く体力を持ち、体格差もあって戦っても勝ち目は無いだろう。
「捕まるわけにはいかねえんだ。まだまだやりたいことがある」
怪人は、この身体に改造される前は連続強盗で指名手配されていた犯罪者だ。他の怪人たちは組織が拉致して無理やり改造手術を施すのだが、彼は違う。警察から逃れる力を求めて組織に自ら売り込んだ。
だが、怪人が望む力は手に入らなかった。組織としても、裏切る可能性の高いこの男にいきなり強力な力を与えたくなかったのだ。
だから男は実績を作る必要があった。この身の軽さを活かして様々な場所に進入し、時に人を傷つけて、金品や重要機密を奪う。奇しくも怪人になる前とさほど変わらない日々。
グリーンは目を細める。
「……あんた、犯罪者だな。連続強盗犯、指名手配もされてる」
フルフェイスに仕込まれた通信機からの情報だ。
「だったらなんだ!」
「……僕は一応ヒーローだから、怪人は捕まえないといけない。けれど怪人の大半は、組織の被害者たちだから保護しなくちゃならない……でも、あんたは違う。だから……」
お仕置きだ。
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