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ぷちゅ。

ん、あれ? なにこの柔らかい音?
なんでマスターのやたらダンディな顔がこんなに近いんだ?
なんか、ぬるってする、ぬるって。
もしかして、これ、舌?

「んっ?! んんっー!」

ちょっ、なんで俺マスターにベロチューされてんの?! ふわ、なんかヤバっ、舌掻き回さないでっ?!

バシバシとマスターの背中を叩く。離れろ、もうほんとヤダ!

なんで俺にキスすんの? 俺、どっから見ても男だし、背だって同じくらいじゃんか。流行りの男の娘とかでもないし女装してもただのギャグだし!?

「っぁ…ちゅる…ふぁ」

うおお、なんで俺こんな声出してんだよ?! やめろキモいっ、アイデンティティーが壊れるっ!

……でも、マスターの舌は気持ちいいかも……なんか苦くて珈琲味だし。あ、よく考えたらこれファーストキスじゃん。初めてのキッスは苦かったです。

「ふぁ、っ、マスター…?」
「んっ。……す、すまない智哉くん……き、君があんまり可愛かったから」

え、何なのその理由?
可愛かったらキッスプレゼントキャンペーンでもしてるの? 俺はマスターのお眼鏡にかなったわけか。
いやいや、ダメだろいろいろさ!

「は、離せっ、離れろよぉっ」

むりやり体を捻ってマスターの腕から脱出。
なんか怖い、このままここに居たら、確実に俺が壊れてしまいそうだ。

俺が暴れると、マスターは暗い顔をしてあっさり離した。やばい、その顔やめぇや、なんか罪悪感がハンパねぇ。

「す、すまない……本当にごめんなさい。……わ、わたしは……」
「お……俺、帰る! 帰ります!さいならっ」

俺は無我夢中で駆け出して、喫茶店から飛び出した。






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