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怪人が目を覚ました時、両腕が縛り上げられて冷たい床に転がされていた。

「いっつ……ここ、どこだ」

腹が痛い。いや、全身痛むが特に腹が痛いのだ。
知らない場所だ。くん、と鼻を利かすと、タバコと石鹸の匂いが近づいてきていた。誰か来る、身構えた怪人は目を丸めた。

「起きたか、ちょうどいい」
「!?」

部屋に、半裸の男が入ってきた。髪はしっとり濡れていて、腰に一枚タオルを巻いているだけだ。タバコを燻らせる様がやけに似合っている、端正な造りだがどこか怜悧な印象の男。

「お、お前は……」

宿敵であり先ほど不覚を取った相手、ブルーその人だ。

「な、なんで半裸なんだよっ! ここ何処だ! 解け、解けよ!」
「うるせぇ、黙んねえとまた沈めるぞ?」

ブルーはふうっ、と紫煙を吐き出しながら、後手に部屋の内鍵を掛けた。かちん、という金属音がやけに恐ろしく感じるのは、気のせいではない。

「まあ俺も鬼じゃない。質問には答えてやろう。半裸なのはシャワーを浴びたから。従業員用の簡易シャワーまであるとか便利だな。ここはお前が襲ったショッピングモールの従業員用休憩室。そして最後に、解くわけねえだろバカ犬」

ブルーは小型冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して飲む。
怪人はあまりに動きの読めないブルーが恐ろしくて、少しでも距離を作るために身を捩った。

そんな怪人を、見透かすように冷たく笑うながらブルーが見下ろす。

「さて。バカ犬くんようぉ……覚悟できたか?」

怪人はぞっとして体を強張らせた。怖い……殺されるかもしれない。いや、その前に拷問されて組織の情報を攫われるのかも……。

怪人が震える最中、ブルーはくつくつと喉の奥で笑った。
ぱらり、とブルーの腰を覆っていたタオルが床に落ちる。一糸纏わない姿のブルーに、怪人は別の意味で体を強張らせた。



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