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犬型とはいえ、見た目は殆ど人と変わらない。ただ、耳はふさふさとした毛で覆われた三角の形をしていて、鼻先は少しばかりとんがっている。大きな口には鋭い犬歯が覗き、タンクトップから剥き出す両腕にはゴワゴワした毛が覆っていた。
なによりブルーの琴線に触ったのは、穴の空いたパンツから飛び出す尻尾だ。モサモサとした焦げ茶色の毛が何処かユーモラスであり、威嚇しているのか、今はぴんと立っていた。

正確には犬ではなく、狼なのだが、ブルーが知る由もない。

「変身ーー」

ふっ、とブルーの身体が光輝くと、数秒で戦闘用のスーツとフルフェイスに覆われる。ブルーはこのスーツがダサくてあまり好きでは無いが、このスーツには全身の筋力を向上させ、さらには防刃防弾効果もある優れものだ。

「ちっ、てめぇがブルーか! ちょうどいい、俺の初陣の手柄はお前のくぷかごゃっ!?」

怪人が台詞を言い終える前に、ブルーの飛び膝蹴りが見事に怪人の顔面に突き刺さった。
床に倒れ転がる怪人、ブルーはなんの躊躇いもなく、ブーツの底でぐりぐりと怪人の腹を潰す。

「あぎぎがっ! や、やめげはぁっ! いだだだだ!」
「ぎゃーぎゃーうぜーよ犬っころ。まあ、少しばかりヤンチャな方が躾がいはあるか」
「むりやめだずげあぎゃあががっ! がふ……」

かくん、と怪人の身体から力が抜ける。
ブルーはぶくぶくと泡を吐いて失神した怪人の首根っこを掴み上げ、唖然と見ていた警備員に振り返って尋ねた。

「おい、何処か鍵のかかる個室はあるか? ベッドがあればなお良いが」
「こ、個室ですか……? じゅ、従業員用の休憩室ならありますが……ベッドはないですけど」
「そこでいいか。その部屋借りるぞ? ちょっくらこの犬を躾るから」

フルフェイスに覆われているため、ブルーの表情は本人以外は分からない。だが、その声色はたっぷりの嗜虐心で踊っているようだったという。




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