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case2 ブルー


(ブルー、緊急だっ! 怪人が現れ人々を襲っている、直ぐに現場に向かってくれ!)
「あー? ……だりぃなぁ」

ブルー、と呼ばれた男は通信機からの指示に露骨に眉を顰める。

「なんで俺なんだよ? レッドとグリーンはどうした?」
(二人は別件で既に動いている。近くに居て、尚且つ動けるのは君だけなんだ!)
「はぁ……折角の休みだってのに面倒くせえなぁ……」

コートからタバコを取り出して火をつけながら、怪人が現れたという場所に向かう。
今日は本業が休みだったのでぶらぶらと街を歩いていたのだが、とんだ邪魔が入ったものだ。


「ぎゃはははっ! 逃げ惑え人間どもっ! 貴様らの臓物を喰いちぎるぞ!」

キャーキャーと悲鳴が聞こえる。探すまでもなく、その中心に怪人が居た。

「見つけた……お、あれは……」

その怪人を一目見たブルーは、少しだけ気分が高揚した。気怠げだった眼差しに、剣呑な光が宿る。

怪人は大型ショッピングモールのエントランスで暴れていた。人が集まる場所を襲撃したのだろう。取り押さえようと奮戦した警備員や店員の何人かが倒れているが、痛みに呻いているだけでそれほど怪我は重くないらしい。
軽傷者は多いが、死者は出ていないようだ。

「なんだ貴様!」

怪人がブルーに気づき、がっと唸りを上げた。
血を流す腕を抑える警備員が叫ぶ。

「君っ、危ないから早く逃げなさいっ!」

ブルーはタバコをぷっと吹き出し、ブーツで踏んで火を消す。ショッピングモールの床にポイ捨てはいろいろと問題だが、物が散乱して壊れた破片で埋まっているのだから今更大した問題ではない、とブルーは判断したようだ。

「おい、そこの犬っころ」

ブルーは【変身機能付き腕時計】を掲げ、笑う。

「お前、俺のペットになれ」

その怪人は、犬型だった。




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