ヒーロー1

case1 レッド


「おらおらおらぁあああっ! 金出せ金ぇえええええ!」

ガシャガシャと乱雑にあらゆるものを薙ぎはらうぴったりとした黒服に覆面の男。その背中からは太い触手のようなものが何本も伸びていて、鞭のように風を切って周囲のものを破壊していた。

この触手怪人は、悪の組織デミウルゴスの戦闘員。真昼の銀行を襲撃し、金を強奪しようとしているのだ。

「や、やめてください! お金なら出しますからっ」

銀行の支店長は青ざめながら怪人を宥める。平身低頭で脂汗を浮かべながら、ちらちりと時計を盗み見ていた。

(通報してから五分経った…あと少しで、彼が来てくれるはずだ……)

幸い、他の銀行員や客は既に逃げ出しており、人質といえるのは自分だけ。
少しでも時間を稼ぐために、支店長はわざと怯えて手が震える演技をしながら鞄に現金を詰めていた。
怪人はいらいらと触手を振るう。
ばちんっ!

「遅えっ! ったく、さっさとしろこののろまっ! もういい、俺が自分でやるっ! お前は邪魔だっ!」

痺れを切らした怪人は、支店長の首を触手で巻き上げて持ち上げる。ギリギリと締まる触手に支店長は窒息していく。

もはやこれまでか。支店長が諦めたその時、1人の青年が颯爽と現れた。

「そこまでだ! その人を離せっ、オレが相手になるぞ!」

高らかに宣言したのは燃える真紅のライダースーツに身を包んだ若き漢。フルフェイスマスクのシールドは濃いスモークで覆われているため顔立ちは不明だが、胸元に燦然と輝くヒーローの証である不死鳥のエンブレムが彼の立場の証明だ。

「現れたなっ、レッド!」

怪人は振り向きざまに触手を振り回し、レッドに向けて一撃を加える。
レッドは素晴らしい反射神経でそれを掻い潜り、支店長を掴む触手に手刀を見舞う。

「ふっ!」
「ぐあっ!?」

びしっ! と鋭い一撃に怪人は悲鳴を上げ、支店長を取り落とす。
床にもんどりうって咳き込む支店長を背中に庇いながら、レッドは叫ぶ。

「ここはオレに任せて、あなたは逃げるんだ!」
「げほっ…レッドさん……ありがとございますっ」

走り出す支店長。
怪人は触手を伸ばして支店長を追撃したが、レッドが悉く迎撃した。



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