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「なあ、シバ」
「ん?」
「お前さ。なんで此処にいるんだ?」

行為の後、俺たちは再び土手に腰掛けて喉を潤す。俺はビール、シバはジュースで。

「さあ、俺にもわからねえ。気づいたらこの場所だった。……そんで、暫くぼーっとして、ふと自分が死んだことに気づいて、そして……リュウが来た」
「……なあ、シバ。本音でいうとよ、22年前、此処で初めて幽霊のお前に会った時、俺はお前に連れていかれるんじゃないかと思った」
「はぁ? 連れてくってあの世に? なんで俺がお前を殺すんだよ」
「いや、冷静に考えたらそうだけど、あの時は余裕無くてな。それによく聞くだろ? 幽霊とすると、生気を吸われるって。……お前になら連れてかれてもよかったよ、本心から思った。置いてかれるくらいなら、いっそ、な?」

俺はぬるいビールを飲む。
シバは、何か言いたげに俺を横目で見つめている。

「……実はな、先月娘が結婚したんだ。やっと肩の荷が下りたよ」
「え、凄いな。確か娘さんってまだ20だろ?」
「あぁ、まだ早いと思ってたんだが……まあ、相手もいい人だし、区切りがついたかなって思ってな。……女房にも蓄えは残したし保険もあるから、俺がいつ死んでも問題ない」
「……リュウ、なんでそんなこと言うんだよ。よせよ」
「……シバ」

俺は最後の一口を飲み干し、シバに向き直った。

「俺な、ガンなんだよ。もう助からないくらい進んでいる。……まあ、歳も歳だしな」
「……」
「だからさ。もう、いいんだよ。シバ、お前が此処に留まることはないんだ。……一緒に逝こう」

笑ってくれよ、シバ。泣くな、幽霊が泣くなんておかしいぞ?

「……リュウ。俺、俺な。死ぬ前に、凄い後悔してたことあるんだ」
「ん」
「お前、覚えてないかもしれないけどさ…冗談めかして好きっていっただろ? ……あれ、本気だった。好きで好きで……だから怖くなって、お前に嫌われたら怖いから、県外に逃げた」
「……ん」
「死んでも死に切れなかったんだな。だから、お前との思い出があるこの場所に縛られたんだ。一年に一度しか会えないけど、それでもよかった。会えない時間はお前のことばっかり考えてたっ……!」
「シバ……」
「歳をとってくリュウと、変わらない俺。いつか、お前は俺に会いにこなくなるかも……そう思って、だから最近は来ないでくれって、距離を取るようにしていたんだ。……お前のこと、帰したくない。奥さんや娘さんには悪いけど……だって、俺……っ、俺の方が絶対リュウのこと好きだ! もう、我慢できないんだ……」




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