恋1

彼岸花が咲く土手をざかざか進む。
手土産は酒と少しの摘み。ただそれだけでいい。

片田舎の、寂れた橋の下。砂利と雑草で荒れたところだが、小さな木の家がある。手作り感満載の、かなり古い小屋だ。
その小屋の前に、あいつは今年も佇んでいた。

「よお、シバ。今年も会えたな」
「リュウ、毎年のことだけど、よく来るなお前も」

シニカルな笑みを浮かべる青年。年恰好は18歳、それなりに均整のある体格に、まあまあの造りの顔立ちの、普通の男。それがシバだ。

「土産持ってきたぞ、ビールと、さきイカ」
「おっさんくさいな」
「いいんだよ、俺はおっさんだからな」

若い外見のシバと比べ、俺はどこにだっているただのおっさんだ。今年で40を迎え、最近は腹が弛んできた自覚がある。

「リュウ、お前去年より太ったか?」
「……わかるか?」
「わかるさ」

俺たちは土手の雑草が生える柔らかな傾斜に座り込み、缶ビールで乾杯する。

「乾杯」
「ん、乾杯……」

ごっ、ごっ、ごく。喉に流れ込む苦いビールが堪らなく美味い。普段は安い発泡酒ばかりだからか、黒生は格別だ。
ちらりと横を見ると、シバは舐めるくらいしなビールに手をつけない。

「へん、お子様め」
「うるせ、仕方ないだろ、こちとら永遠の18歳だぞ。四十路のおっさんとは味覚が違って当然だろ」

シバはむっと怒り、無理にガバガバビールを流し込んだ。そしてむせた。

「う……げほっ、がほっ、うえ……」
「もったいないことすんなよ。ほら、ジュースもある」
「うん……はぁ、やっぱり酒はわかんねえ。もうちっと長生きしてたら味わえたかな」
「さあな、案外下戸だったかもしれん」

俺は袋から缶ジュースを取り出してシバに放る。シバは素直にそれを受け取り、余ったビールを俺に寄越した。




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