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坊ちゃんの言う通りに車を走らせる。そこは屋敷からそう遠くない、小高い丘の上の広場。
車を止めると坊ちゃんは夕焼けの広場に駆け寄って、誰もいない遊具の上に乗った。

「イヅル様、危険です。怪我でもなさったら……」
「わかってる。少しだけ……なあ、巴。お前がうちの屋敷に来てからどのくらいだったか?」

坊ちゃんは黄昏に目を細めながら私に問いかける。

「そうですね。かれこれ9年ほどでしょうか」
「巴っていくつ?」
「今年で30を迎えます」

今日18の坊ちゃんと比べ、私も歳をとったものだ。

「ってことは、俺と最初にあった時巴は21とかその位か。若いなぁ。俺はまだ9歳か……ガキだったな」
「そんなことありませんよ、イヅル様は幼い頃から聡明で手のかからない優秀なお方でしたから」
「やめろそれ、鳥肌たつ」

本当に、本心からの言葉なのだが、坊ちゃんはけらけらと笑って誤魔化した。

「巴ってたしか、大学中退してうちに来たんだよな」
「はい。……父が亡くなり、母も病気がちでしたので大学に通い続けるのは難しく。父の仕事の知り合いというだけで私を雇い入れてくれた旦那様には幾ら感謝しても足りません。私は本当に良くして頂いております」
「……いいなぁ、親父」
「?」
「あ、なんでもない。こっちのこと」

私は腕時計に目をやった。そろそろ時間だ。

「イヅル様。そろそろお時間が推しています」
「んー、でもまだプレゼント貰ってない」

寄り道だけでは満足されなかったようだ。困った、私に今すぐ差し上げられるものなんて…。

「巴、ちょっとこっち向いて」


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