11


ちゅん、ちゅん。
小鳥のさえずりで俺は目を覚ます。そういや最近になってアパートの屋根に巣を作ったんだっけ。

目覚めた俺は、なぜかベッドの上だった。もしや、昨日の出来事はみんな悪夢?

「起きたか」

あ、違った現実だ。
ベッドの脇に立つやたらふてぶてしいイケメンと俺の尻の痛みが妄想への逃避を許さなかった。

「……なんで俺の部屋、知ってんの?」
「神だからな」

あ、そうかい。
俺は頭を掻く。あれ、指通り滑らかだ、昨日風呂入ってないのに。
なんか身体からいい匂いがする。甘い果実のような香り。それに何だよこの白い浴衣みたいなやつ。

「昨日儂がお前の身体を清めているときに、お前は意識を失ったのだ。此処まで運ぶのはそれなりに骨が折れたぞ」
「……誰かに見られたりした?」
「管理人と名乗る老婆と話をしたが」

マジか。引っ越そうかなぁ……。

ぐぅ、腹が鳴る。そういや夕飯食べ損ねたっけ。冷蔵庫に何かあったかな、買い物してないからなぁ。

「朝食なら用意したぞ。食え、食って精をつけろ。お前は薄過ぎる」

神様が用意したという食事は、やたら立派な尾頭付きの魚の塩焼き、ハマグリのお吸い物、白米、漬物、卵焼きなど。それらが一人暮らし向けの小さな座卓に所狭しと並べられている。

「……これ、どうしたの?」
「喚び出したのだ。神通力でな」

ぱん、と神様が手を叩くと、座卓にふかふかの座布団が二枚並んで現れた。はあ、便利だな。

「お前の着物も直しておいた」

壁に昨夜のスーツが掛かっている。確かにキレイだ、尻も破けてないし新品同様。

「……神様って何でも治せるの?」
「大抵のものならばな」
「じゃあ昨日のことを無かったことにして。そしてお帰り下さいお願いだから」
「それは断る」



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