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あ、電波さんだ。
やばい、関わりあうとろくな目に遭わない。俺の危機回避センサーがばちばち反応してる。逃げよ、すたこらさっさ。
「待て、どこへ行く」
さあね、あんたの知らない場所だよ。
石造りの階段を駆け下りる。何年も放置された石畳からは草や木の根が飛び出して歩きにくいが、通い慣れた俺には無問題。
ちらっと振り返ると電波さんは社に腰掛けたまま、追いかけてくる様子も無い。よし、逃げ切れた!
「あれ……?」
いつの間にか、俺は社の目の前にいた。うん、何言ってんだよ俺。
おかしい、確かに階段駆け下りて神社から脱出したはずなのに、なんでまた此処に戻ってるんだ?
「何をしている。無駄だ、出れぬぞ。儂の話を聞け」
電波さんが何か言ってるけど、俺は無視して回れ右。再び階段を駆け下りる。
「無駄だと言った。聞こえないのか?」
ぜぇーぜぇーぜぇーぜぇー。
息が切れる。ヤバイ、運動不足だ、死にそう……。
何度試しても神社から出れない。怖い、なんだよこれ、いきなりホラーじゃん!
「こっちを向け、アキラ。儂の話を聞け」
え、なんで俺の名前知ってんの?
汗だくになりながら振り返る。社の段差に踏ん反り返るやたら偉そうな電波さんは、やっと俺が振り向いたのが嬉しいのか、にぃ、と唇の端を釣り上げた。すげー悪役チックな笑みだな。
「この神社の外と内の空間を一時的に拒絶した。内から出ることも、外から入ることも今は出来んぞ」
拒絶するのはその電波だけにしてくれ、もうやだ、頭痛い。
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