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それでも放置なんて出来ないから、外向けの声でにこやかに出る。

「はい、清水です。はい、はい…あー……はい、畏まりました。それでは明日の朝一に…はい、それではそのように手配致します。はい……わかりました。失礼いたします」

ケータイを切り、俺は吐きそうになった。
苦しい、なんでこんないやな思いして働いてんだ?
もうやだな、本当に。ペコペコ頭下げて、なんで俺ばっかり。つーかさっきのミス俺じゃないし! 皺寄せ持ってくんな、死ね!

「はぁ……」

またため息だ。多分意識してないだけで山ほど出てるんだろうな。慰めてよ、誰か。

「……明日朝一かぁ……やだなぁ、ゆっくり寝たいよ」
「寝ればいいだろう」
「そういうわけにもいかねぇんだよっ」

朝一の電車で出勤して、速攻で書類整えて、部長から判子貰って、バイク便出してデータ纏めて資料に目を通してそれからそれから……ん?

「わからんな、眠れないわけではないのだから寝たいだけ寝ればよかろう……」
「……だ、れ?」

なんでナチュラルに俺の独り言に混じってんの? というか、何時から俺の隣に座ってんの? あとそれ、コスプレ?

俺の隣には、やたらふてぶてしい面構えのイケメンがいた。具体的には二重でキリッとした目で鼻は高くて薄くて形のいい唇でエラ張ってないシャープな頬の、凄い端正な顔立ち。なのになんかふてぶてしい!

着ているのは着物で、やたら分厚い胸板がチラチラ見えている。うわ、俺の胸板…薄過ぎ?

「いつからそこに?! ってか、なんなんだよ一体っ、独り言に勝手にはいって来ないでくれ」
「独り言? 何を言う。お前は儂に話していたのだろうが」

んん? なんで初対面さんにそんなこと言われてんの、俺?

「儂は神だ。お前の願いを聞き届けてやるために降りてきた。崇め奉れ。さすれば願いは叶う」





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