神 1

がらん、がらん、がらん。

紅白の網縄に繋がる鈴をかき鳴らす。
黄昏時の寂れた神社。
人気もなく、常駐する神主もいない。完全に人々から忘れ去られた場所。

俺はこの神社が好きだ。ガキのころから、よくこの神社に来てはこうやって鈴を鳴らしてお参りしていた。
たぶん、そんな物好きは俺くらいだろうな。だって、俺以外の奴は見たことないし。

「神様、居るのか居ないのかよくわかんないけど、居るのならどーか、どーか俺に春を下さいっ。24年生きてきて未だに童貞彼女無しは辛いです。神様、この際文句は言いません、俺みたいなダメ男でも好きになってくれるいい子なら、見た目とかほんと気にしないんです。神様、どーかどーかお願いします」

念入りにお願いし、手を合わせる。お賽銭だって奮発した。
この神社で願いをすると、不思議と叶うことが多かった。明日の山登り面倒くさいから雨にしてとか、テスト受けたくないから風邪引きたいとか、まあそんな細やかなお願いだけれど……。

この神社に何が祀られているのか、俺はハッキリとはしらない。そもそも神様が居るかどうかもあんまり信じてない。でも、人間最後は神頼みに走るものだ。

「……はぁ。俺、なんでもっとイケメンに生まれなかったんだろ…あーあ、もっとこう、二重でキリッとした目とか、高い鼻とか、薄くて形のいい唇とか、エラ張ってない頬とか、そんな感じに生まれたかった」

因みに俺の顔は上の要素を軒並み反転させた感じだ。ようは眠たげな一重で鼻は低くて唇はガサガサで頬もちょっとだけエラ張ってる。あー、整形外科ってどのくらいかかるんだろ。

「もうやだなぁ……なにやっても上手くいかないし。いっそ死のうかなぁ……」

とか呟いても、死ぬつもりなんてこれっぽっちもない。臆病な俺は騙し騙し生きて、それなりの歳で死ぬんだろうな。

「……はぉ」

ため息ばっかり出る。
スーツのポケットに入れていた仕事用のケータイがちかちか光っている。やめてくれ、なんで仕事終わりに社用電話にかけてくんだよ!




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