マッサージ1

「お待ちしてました、鳥羽新造さまですね。こちらへどうぞ」

その日の昼下がり、サラリーマンの新造はとあるマッサージ屋に来ていた。今年で37を迎える新造は、近頃なかなか体の疲れが抜けないことを近しい友人にボヤいたところ、このマッサージ屋を紹介されたのだ。

小さな店だ。従業員も店長の男だけ。予約制であり、今は新造と店長の男だけが店内に居る。

施術室はベッドが一つ、棚の上にはマッサージに使う器具が並んでいる。なかなか使い込まれていて、少々草臥れているようだ。
だがそんな慎ましさがかえって落ち着いた。

店長の男は新造より5つは若く、中年体型の新造とは対照的にかなり引き締まっていた。なかなか男前だ。

ふんわりと店内を包むアロマの香りが眠気を誘う。新造は思わず欠伸を漏らした。

「こちらの籠に服を入れて、この施術衣に着替えて下さい」
「ん、ああ。……下着とかも全部か?」
「はい。マッサージにはオイルなども使用するので、服が汚れてしまいますから。……恥ずかしいようでしたら紙製のショーツもありますよ」
「い、いや結構だ」

マッサージなんて女のいくところだと思ってた新造は気後れしつつ服を脱ぎ、薄いビロードのような肌触りのガウンのような衣を着る。なんだかすーすーして落ち着かない。

男同士とはいえ銭湯の脱衣場というわけでも無く、しかも向こうは服を着ている。自分だけ裸なのは落ち着かない。
もともと人見知りの気がある新造は、表情を殺してベッドに上がった。



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