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シャワーから上がり、マスターが用意してくれた着替えに袖を通す。
シャツは支給されたものと同じ、下着は近くのコンビニで買ったのかな? 真新しい未開封のものだ。ズボンは多分マスターのやつ、背丈同じだけど…うわムカつく、マスターの方が股下長い。

「シャワー、お借りしました」

マスターは店のカウンターで何かを作っていた。甘い香りがする、これは…お汁粉?

「あ、ああ。智哉くん、取り敢えず軽く食べるかい? こんなもので良かったら」
「お汁粉スキですけど、なんであるんです?」
「夏頃に抹茶と小豆で和風スイーツを出そうと思ってて、試作品用なんだよ。餅は無いから白玉だけれど」

白玉いいね、俺は餅より好き。あのツルッとした喉越しがサイコーってなんかビールのコマーシャルみたいだな。

俺がカウンターに座ると、お汁粉の他にもお茶やらビスケットやらサンドイッチやら、いろいろ出てきた。マスター落ち着いて、一人じゃ食い切れない。

「食べ終わったら家まで車を出そう」
「はい。…マスター」
「な、なんだい?」
「マスターって、俺のこと抱きたいの? それとも抱かれたい?」

ぶっ。
マスターが鼻からお茶吹いた。うん、ごめん、ちょっと予想してた。テヘペロごめーんね、とかやったら赦してくれるかな? 俺だったら赦してやらないな、やめとこ。

「げほっがはっ……い、いきなり何を」
「だって、気になるじゃないっすか。正直、俺の身体なんてどこをとっても不味そうだし…」

もちゃもちゃもちゃもちゃ……白玉美味い。
マスターをチラッと盗み見る。わ、顔真っ赤だ、やばいちょっとーー来るな、これ。

「……こんなこと答えたら、君は私を気持ち悪がるだろう」
「気持ち悪いのならとっくに帰ってますよ。あとキスされた次点でマスターのこと殴ってます」

割と嘘偽りない本心。キスされた時、ビビったしなんか混乱したし怖かったけど……でもマスターを殴ろうとか、そんな事は考えなかった。
そもそもあれだ、告白紛いなことされて、大人しく家に持ち帰られてシャワー浴びるとか、この後どう考えてもご馳走様だよな。

「……抱きたいと、思っているよ」
「マジですか? だって俺、尻に一昨日すっ転んだ時の痣ありますよ? 萎えません?」

マスターが頷く。

「いつから俺に惚れたんですか?」
「君が……面接に来た時から、何となく好みの顔ではあったんだ。君は今時の大学生だし、この店は、まああんまり流行ってないから。すぐ飽きて辞めるんだろうなって、勝手ながら思っていた。だから、好みのタイプでも気軽に採用できた」

でもね、マスターが俯く。

「君は私の予想よりずっと働き者だし、こんな中年にも気軽に話してくれた。たまに粗忽なこともするけど、くるくる変わる表情が好きになっていった。……君が好きなんだ」

はあ、どうしよ、マジ。

俺、好きって言われると好きになっちゃうタイプかもしれない。

そんな目で見られたら、落ちるよ。



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