「お前そんなにチョコ買って何すんだよ。チョコレートショック?」
「意味わかんない」
「学がねえな。オイルショックって習うだろ普通」
「それが語源だって分かるわけないし!」

 2月13日。明日はバレンタインだ。私も一応は女なのでバレンタイン用のチョコを毎年作っている。……評判はあまり良くないが、それは無視させていただこう。

「俺が理解できねえのは、一度溶かしたチョコをもう一回固める事だわ」
「じゃないと好きな形に出来ない」
「既製品買えばいいだろ」
「男は黙ってて!」

 侘助の作ってやらない!と脅すと、含み笑いしながらふらりと侘助は奥に引っ込んだ。そういう所は素直に好きだ。そういや東京で愛しの彼氏とキャンパスライフをエンジョイしている夏希ちゃんから今年はチョコが届いていない。どうしたんだろう。そんな事を思いながらチョコをかき混ぜる。トリュフうまく出来るといいなあ。


「できた!」

 数時間後、大量のチョコが完成する。陣内家と実家には今年は大サービスをしてみた。と、メールが来ていた事に今更気付く。開くと夏希ちゃんからで、今年はチョコを送らないそうである。理由は、とスクロールしたところで私はひとり火照った顔を押さえた。

「ひとりでなに百面相してんだ」
「わ、侘助!ああちょっと!携帯!」
「つーかお前いい加減スマホにしろよ。お、夏希からか」

 沈黙。

「夏希はあいつともうセ」
「最後まで言うな!」

 実は明日は私たちの結婚記念日、一回目。夏希ちゃんの文章はバレンタインを被せたそういうメールだった。うーん、こいつと甘い夜。

「似合わないな」
「俺も願い下げ」
「こっちだって!」
「シシシ、怒ったら更に不細工だよな」

 侘助の胸ポケットに入ったiPhoneが振動する。パスワードを打ち込む侘助の姿を見何気なくて、私の下がりかけた熱はまた一気に上がる。そんな私に侘助は眉間にシワを寄せた後で気付いて、そうしていつもより耳が少し赤く染まった。

 こんな私たちを、世間はリア充乙とでも言うのだろうか。

Sticks and stones may break my bones!
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