**は(宣言どおり)毎日ひとつだけオーナメントを飾っていった。増えていくオーナメントにうんざりしていたリドルだったが、部屋のインテリアには人一倍こだわりがあったので、ある日とうとう「そこにつけるのはバランスが悪い」と口出してしまった。**はついに来たぞと内心ほくそ笑みながら、困り顔をわざとらしく作って、淑女が殿方に喋りかけるような口ぶりでリドルにどこが良いか尋ねた。

「ここだよ、ここに置くと丁度収まりが良い」

 オーナメントを握ったままの**の手を掴んでリドルはことも無げに自分が望む場所にそれを持って行った。**は反抗する様子を一切見せないで、「ここね」と素直にオーナメントを飾った。

 リドルが腕を組みながら満足気な顔をするので、**はつい笑いそうになるのを堪えた。当の本人はとっくの昔に謀られていたことを気付いていた。しかし、この際気にしないことにした。

 モミの木を自分の家に許可なく置かれただけで気に食わないというのに、センスがない飾り付けをされてはますます気に食わない。それならばいっそ介入してしまおう、と都合の良いことを考えていた。


 それからリドルは**と一緒になって熱心に飾りつけをするようになった。

 「これを飾りつけたらもっと良くなるだろう」とふたりして同じオーナメントを買ってくる日もあった。リドルは被ってしまったことに機嫌を悪くしたけれど、**は「一緒のオーナメントだからふたつでひとつ分」と嬉しそうに飾りだすので、「それなら場所は分けて飾る方が良い」とまた口を出してしまうのだった。

 そうしてクリスマス・イブの夜、いよいよてっぺんに星を飾るだけになった。金色に輝いた星の片方をリドルに持つように告げる。

「**のツリーだ。所有権は君にある。君だけで乗せろ」

 **は目をぱちくりさせて、リドルの顔を見ながら優しく微笑んだ。

「これは私たちのツリーだもん。二人で完成させるのよ」

 だから持って、ともう一度**は星の片方をリドルに向けた。今度はリドルの手が伸びてきて、ふたりで一番上に星を飾った。ツリー用のライトもつけられていたので、その光に反射して星がきらきらと輝いてとても綺麗だった。

 電気を消したらきっともっと綺麗だと**が言うので、言われたとおりにリドルはスイッチをオフにした。ツリーの下に座り込んで目を輝かせている**にちょっとしたサプライズをしてやろうと、2色しか点灯しないライトを7色に変えてみせる。(7色のライトは値段がそれなりにしたので、2色だけのものにしたのだ。)

「あれ、これってこんなに色あったけ?買い間違えたのかなあ。したらば儲けもんだね」

 思ったとおり**が呑気にそう言うので、リドルは素知らぬ顔でそうだねと言って自分も隣にあぐらをかいた。

「あ、そうだ忘れないうちに」

 **はツリーの後ろに置いていた紙袋をそのままの体勢で引っ張り出して、中から小包を取り出した。

「クリスマスプレゼント!」
「……どうも」

 中身は上等そうな革の手袋だった。今使っている手袋の先っぽが破れかけているのを**はきちんと知っていたのだ。「僕からも」とリドルが言うだけだったので、**は首を傾げた。リドルは手に何も持っていないし、何かを渡された記憶がない。

「首に手を当ててごらんよ」

 言われたとおりに**が首元に手をやると、爪の先になにかが引っかかった。ライトのもとで見てみると、どうやらネックレスらしい。**は顔を上げてリドルを見てふふと笑った。

「リドルって魔法が使えるの?いつも昔からこう。素直に渡せばいいのに」

 この石はダイヤだろうか。光に反射して暗闇の中きらりとネックレスが光る。

「そうだ、僕は魔法が使えるんだ」
「めずらしい、恐ろしいほどに現実主義のリドル様が」

 本当のことなのだけれど。信じてもらえそうにないので、リドルは口をふさぐようにその唇にそっとキスをした。ツリーが自分の役目を果たすかのように一層輝きを増したことにふたりは気付かなかった。


Merry Christmas!


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