タイトルから大体察してほしい
現パロ
なんでもいける人向け
みんなが書いてくれなさそうなので書きました2 ただ、単純にいつもと違うような子と付き合ってみたいと思った。理由なんてそれだけだ。
あと10分ほどで彼女が最寄り駅に着くだろうからそろそろ迎えに行くか、と腰を上げたところで、チャイムが鳴った。インターホンを見ると、案の定、彼女がにこにこしながら立っている姿がうつっていた。その左手にある馬鹿でかい紙袋は、いったい何なんだと思いつつ、エントランスの解除ボタンを押す。すると彼女は、監視カメラとは逆方向に手を振った後、向きが違う事に気付いたのか、あたふたした様子で今度はきちんと監視カメラの方に向かって手を振り直した。これを素でやっているのだろうから、恐ろしい。
彼女との付き合いは自分にしては長く、恋人の仲になってから、もう半年は経とうとしていた。付き合ってその日にヤるなんてのは当たり前。その日限りの関係なんていうのもしょっちゅうあった。なので、初デートの際、まだ22時を過ぎた頃だというのに、「では、おやすみなさい!」と電車に乗って帰ってしまった時、俺は驚愕した。キスも、手すらも繋がずに別れたのは、初めてだ。のちのちに聞けば、彼女は学生の頃、1回付き合った事があるだけだと恥ずかしそうに言った。「(ではこれからそういう展開に持ち込んでいけばいい)」と呑気な事を考えていた当時の自分を殴りたい。実家暮らしで、どこかに泊まる際は、親に誰だれのどこどこに泊まると言わなければいけないらしい彼女が、デート時、俺の家に泊まることなんていうのはなく、では昼間家に呼びつけてそういう事をしようという企みも大分前に無残に散った。
あれはそう、3ヶ月くらい前の話だ。何回かのやりとりの後、やっと家に来てくれる事を承諾した彼女は(親に知られるとまずいらしい)、やって来て早々、小さい白い箱を掲げて、「ケーキ買ってきたんです!」と純真無垢そうな顔で言ってのけた。まだ彼女がこれから起こる事に対しての恥じらいを見せてくれたら良かったのに、ここまで天真爛漫な笑みを携えながら家に上がられてしまっては、そういう気にならず、その日はケーキを食べただけで本当に終わった。キスすらもなかった。ケーキは彼女の言う通り美味しかった。
たまにするキスだって、少し触れるだけで舌を入れる隙すらもない。彼女の恋愛に対する考えはもしかして昭和初期、大正あたりで止まっているのでないか。それでも唇を離した後、大変照れくさそうに幸せそうに微笑まれると、自分の考えている事の方がよっぽど下劣的なものだと思ってしまうのだった。
「俺、迎えに行くって言ったでしょ、そもそも早いので来るなら……」
「ごめんなさい」
「いや良いんだけどさ、で、今日は何を持ってきたの?」
再びインターホンが鳴ったので、迎え入れる。秋めいてきたせいか、前回会った時七分袖だったのが長袖になっていた。袋の中を覗くと、懐かしいものが入っている。これはもしかして。
「ゲ、ゲームキューブ?」
「はい!」
はいってそんな笑顔で言われても。どういうリアクションを取ればいいのか、さっぱり分からない。自分の顔が引きつっているのは分かった。
「ほら、前、ゲーム機で盛り上がったじゃないですか。ファミコン・ニンテンドー64・プレステ、」
「あーうん、そういやそうだったね」
あの時は、自分も懐かしくて珍しく童心に返って、彼女とネットで検索しながら、昔話に花を咲かせたものだった。ファミコンのカセット部分をフーフーしたり、叩いたりしたら良いだとか、マリオやドラクエ、ロックマンの裏技だとか。バイオハザード4のヒロインのパンツを見ようとすると怒られるだとか。無類のゲーム好きだったという兄のプレイ姿を見て育った彼女は当時のゲームの事をよく覚えていた。
「ほとんど捨てられちゃってたんですけど、これは残ってて!神永さん、スマブラしたいって言ってたじゃないですか、だからどうかなって。ソフトもあります!」
「え、それでわざわざ俺の家まで持ってきてくれたわけ?」
「はい!うちに神永さん呼べないですし」
現代のテレビに繋げれるかどうかは、どうやらその兄に聞いてきたらしい。いそいそとセッティングを始めた彼女の後姿を見ながら、今朝、あわよくばとコンドームを確認していた自分を思い出してため息をつきたくなった。
と、ポケットに入っていた女の子専用の携帯が鳴る。彼女に見えないように、暇かどうかの内容に暇じゃないと返して電源を切った俺は、「神永さんやりましょう!」とキラキラした目でコントローラを渡してきた彼女に微笑みを向けつつ、受け取りながらテレビの前に座った。ここまで来たんだ、絶対ヤるまで別れてたまるもんか。それまでは誠実さが出るように女の子と公に遊ぶのはやめよう。懐かしいゲームの開始音を聞きながら、俺はそう心に決めた。
原案:Fさん
prev next←
modoru