「…にしてもやけに琥珀の事守ってんなぁ。佐伯からにしろ。何で?なぁ何で?」


その言葉を聞いて安心したのか、ほっと安堵の溜め息を吐いたチビに少し悪戯心が芽生えて少しニヤニヤしてたであろう俺の横腹を小突いて「帰る」と慌ただしく出ていった。
帰り際お邪魔しましたを言い忘れない所なんか変に律儀だと感心してしまう。



まるで弟のような存在が琥珀の他にもう一人増えたような気分の冬李に対して、梼は心底意地の悪い奴くらいの認識しかしていない事に気づくのはだいぶ先だろう――。












「何で、ねぇ。」


何故かと問われれば即答出来る答えが見つからない。
彼は編入生で、この学園のルールを知らないから守らないといけない?
じゃあ佐伯から守る理由って何?佐伯に任せりゃ良い話じゃん。
何でも僕に頼って欲しいから?
この感情は友達の域を越えてる?


よく分からない感情がもやもやと胸の辺りに留まる。
吐き出し方もよく分からないから、とりあえず今は琥珀の顔が見たくない、そう思って早足で自分の部屋に戻った。

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