ステンドグラス

頭を押さえた梼は何か言いたそうだったけど、諦めたのかため息一つ吐いて分かった、とだけ言うと徐に立ち上がって部屋を後にした。

どんだけ呆れられたんだ、俺…。
そう思ったけど、なんだか一日の疲れと緊張がドッと押し寄せてきてずるずると背凭れに背を滑らせた。微睡む意識の中、そういえば今日の兄貴への強制的な報告がまだだったなぁとか、ケータイを片手に寝るの何回目なんだろとかとりとめのない事をぼんやり考えながら意識を手放した。











「なんだってこんな雑草まみれなのさ!」

ぶつぶつと文句を言いながら鬱蒼と茂る草を掻き分け歩く少年、梼はカーディガンを羽織って来たことを猛烈に後悔している。青々としたオナモミがあちこちに引っ付いて歩く度にチクチクするのだ。
ようやく辿り着いた先にある錆び付いた門を無理矢理に押し開けた。鉄同士の擦れ合うあの独特な音が嫌に耳について苛立ちを更に強くさせた。


特別科の寮の入り口にある掲示板にはそれぞれの仕事やレッスンの予定が書き込まれており、在室かそうでないかが一目で分かるようになっている。個人情報が駄々漏れだけれど、その分個人の部屋のセキュリティは普通科の寮のそれとは比べ物にならない。
目当ての人物の名前の横が空白になっていることを確認して、階段を上った。階段の壁にあるステンドグラスが踊り場に影を落とす。それをわざと踏みつけるようにして残り半分の階段を上がった。


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