攫う

―交流パーティーまで残り1日―
校舎は業者を入れて綺麗に装飾を施し、どことなく学校全体が色めき立っているような気がする。たかが学校行事にパーティーだなんて少し仰々し過ぎないかと思ったけど、実際を目の当たりにするとむしろそう称さないとかえって失礼なくらいだ。
掲示板に貼り出されたペア表を見ようと大勢が寮のエントランスの掲示板に集る。然して興味もない俺は人が退けてから見に行こうと這う這うの体でやっとのことエントランスを抜けた。歓声や落胆の声が入り交じり、人口密度が高いのと相俟って湿気を酷く感じる。触れる人肌がやけに不快に感じて思わず眉を顰めた。



「各務」


凛と響くテノールに呼ばれた気がして振り返ると、人混みの中でも一際目立つ赤髪の東雲先輩と目があった。周りも東雲先輩に視線を向けている。整った目鼻立ちをしているから注目を集めるのも仕方ない事だろう当の本人は慣れたもので適当にあしらいながらこちらに向かっている。必然的にその足の向かう先にいる俺も視線を集める訳で、好奇や嫉妬や驚きを孕んだ視線が一挙にこの場を支配した。


―何で東雲先輩がこんな所に

―それより今、各務って


辺りはひそひそと会話するものの、それぞれがすれば小さなざわめきとなって耳に届く。さすがに耳障りだったのか俺同様に眉を顰めた東雲先輩は顔に青筋を浮かべている。今にも切った張ったの大騒ぎを起こしてしまいそうな東雲先輩に周りも一瞬にして水を打ったように静まり返った。

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