子羊

「実は―――」


今悩んでいる事を掻い摘んではいるけど全て打ち明けてみた。話すのが初対面も同然のような人に相談するような事じゃないだろうし、こんなに深く悩むような内容じゃないんだろうけど馬鹿にする訳でもなく、適当に相槌を打ちながら清聴してくれている。強面なのにとか思ったら失礼かもしれないけど、こういうプラス面のギャップには滅法弱い。



「つまりどっちも選べねえと。」

「まぁそういう事です。」

「じゃ、俺と組むか?」

「…は?」


何を言ってんだこいつは。という言葉は辛うじて飲み込んだ。何と言うか、親衛隊持ちのお誘いは絶対という言葉に捕らわれ過ぎていて頭がガチガチになってた俺にとって、その言葉はまさに目から鱗だ。確かに第三者と組んでしまえばどちらを選ばなくても済む。だけど―――


「ちなみに先輩、親衛隊は…」

「あーそんなもんあったっけ?」



忘れた、と空とぼけてはいるものの嫌な予感ほど的中するもので、やっぱりという感情しか出てこない。そりゃこんだけ整った顔をしてれば周りも放ってはおかないだろうけど。―俺はバレないようにこっそりため息をついた。


「お前の考えてる事当ててやろうか?お前も親衛隊持ちじゃ意味ねぇじゃん。…違うか?」


「まぁ大方そんな感じです。」


図星を指されてどきりとした。俺はそんなに顔に出やすいタイプなんだろうか。吊り気味の瞳から放たれる鋭い眼光ははまるで全てを見透かしているようで、隠したって無駄だと語っている。



「俺は普通科の親衛隊持ちとは少し違って特殊だから」


言葉の真意を訪ねようとしたけど、俺が言葉を出す前に笑って誤魔化された。

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