交流パーティーまであと5日を切って、大半の人がペアを記入した紙を提出している中、俺は未だに考えあぐねていた。
そりゃ普通に考えれば普段一緒に居る梼と組むのが妥当であり普通の流れだと思う。迷う必要なんてないはずなのに、あの時の佐伯の表情に後ろ髪を引かれるような感情があるのも確かだ。





「はぁーどうしよ。」



階段の中程で手摺に寄り掛かるように力なく座り込む。あまり使われていないこの階段はサボるには絶好の場所でいつもはちらほらと人が見えるのに、今居ないのは休憩時間だからだろうか。…まぁさすがに休憩までサボり場所に来る物好きは居ないという事だろう。その方がかえって都合が良い。騒がしい所で考え事をしたって気散じるだけだ。
今日受けた授業は右から左に流れるように滑り出て、いくつかの単語が記憶されていれば良い方なんて散々な様だ。



「邪魔な所に座り込むなうぜえ」


「すみません―」



背後からかけられた声にびくりとして立ち上がる。振り返ると、数段上に立っている相手の綺麗な紅い髪が窓から差す日差しに照らされ燃えるように煌めく。
どこか見覚えのあるようなその色に小首を傾げるけれどよく思い出せない。



「あぁ、お前弁当の…」


「え…?」


階段を降りてきて隣に並んだ男に、何言ってんのこいつと言わんばかりのうろんげな視線を投げつけてからようやく弁当の意味を理解した。
―この人は下駄箱で腹が減って倒れていたあの特別科の先輩だと。


「つーか何してんだよこんな所で」


その言葉そっくりそのまま返してやるよ、と隣にしゃがみこむ赤髪に視線だけで訴えかけたけど、然して気にする風でもなく少しきつめの目は俺と合う事は無かった。狭い階段に男二人並んでいる様は端から見ればさぞ滑稽な事だろう。俺が第三者だったら「ヤダ!あいつら密着して何しちゃってんの」くらい思うはずだ。

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