白群
「何、かぁ…。俺は何考えてるんやろな?」
ぽつりと呟くように吐き出されたその答えになっていない返答は、今にも消えてしまいそうなくらいに弱々しかった。
一見軽率なようで何か考えがあるような、でも実は裏をかいて何も考えてないような、佐伯はそんなつかみどころのない奴だ。
「あぁそうや。今日は襲うために来たんちゃうかった。」
ぱっと先程まで掴まれていた腕が解放され、ようやく背凭れに掛けたままの制服に袖を通す。大分暖かくなったとは言っても朝と晩は冷える。―まぁこの空調効きっぱなしの部屋ではあまり関係ない事かもしれないけど。
風呂から上がってどれくらい時間が経ったか分からないが、濡れたままだった髪もすっかり乾いて、緊張感が無くなったら何となくお腹も減ってきたような気がする。
「で、用あるんじゃないの?」
慣れないネクタイを締めながらちらりとミッキーを盗み見る。相変わらず食えない表情を浮かべたまま、俺の準備が済むのを待っているのかじっとこっちを見ていた。
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