自分の胸元を覗き込むように見ると一ヵ所小さく鬱血が見られる。赤く残されたそれは自分の白い肌の色と対比するととても鮮やかに見える。


「ちょ、まじどいてって」



ぐっと力を込めて胸を押し返すけれど、上からかけられる力に対して下から押し返す力というのは相当に不利だ。今日ほどお世辞にも肉付きが良いとは言えない自分の体を恨んだ事はない。



上目遣いの相手の目はまるで挑発するかのように三日月型に細められ、いかにこの状況を楽しんでいるのかが見てとれる。
男としてのプライドが引き裂かれたような、なんとも耐え難い屈辱に唇を噛み締める。顔面に一発お見舞いしてやりたい所だが、ここで相手を殴ろうもんなら親衛隊が黙っていないであろう事は明白だ。かといってここで黙ったまま遊ばれるというのも面白くない。
形勢逆転を狙いたい所だけど、目の前の男は緩く笑う表情からは想像がつかないくらい隙が見えない。


「なぁ佐伯、お前なに考えてんの?」



愛称じゃなく苗字で呼んだのはもちろんわざと。
目の前の男は俺の言葉に僅かながらぴくりと反応を見せた。

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