栗色

腰に腕を回され、指が触れるか触れないかの微妙な手付きで腰に指を這わされる。それがどうもこそばゆくて、ぞわりと背中が震える。
指は徐々に腰から横腹へと移動している。傷口がある右の脇腹に触られそうになるとぎくりと体を強張らせた。身を捩ってみても左腕を掴まれてソファーの背とミッキーに挟まれるような体勢ではなかなか抜け出せない。



「冗談にしちゃ笑えないな」


「俺は冗談のつもりあれへんよ」



にやりと目の前で笑うその端正な顔は、まるで子供が珍しいオモチャを手にいれた時のそれと酷似している。
そういえばこの学園はゲイバイ率が高いからノンケはめずらしがられるとか言ってたし、それでからかって俺の反応を楽しんでいるんだろう。
なんと悪趣味なと心の中で悪態を吐きつつ、この現状をどうやって打破するか回らない頭で考える。俺が必死に考えてる事なんてお構い無しとでも言うかのように手を滑らせていくミッキーに、焦るばかりで余計に考えられなくなる。




「っあ…」





ぐずぐずと考え事をしている間にも手はいつしか背中をがっちりとホールドしていて、鎖骨にぴりっと痛みが走る。俺もそれが何か分からない程子供ではない。
―キスマークを付けられたのだ。しかも男に。

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