褐返

傷も浅いという事ですぐに退院させてもらった俺は、その夜から前より派手に暴れまわり、自分の心の弱さを隠すかのように力を誇示しようとした。
塞がっていく傷口とは対照的に俺の心に開いた穴は醜さを増してどんどんと増大していった。




そんな折に留学の話が舞い込んで、地元に残るのが嫌だった俺は家族にろくに相談もせず二つ返事で了承した。



その日のうちに身支度を済ませ、留学するからと荷物片手に報告した時のあの家族の驚きっぷりは今でも脳裏に焼き付いている。
有無を言わさず家を飛び出て、そこから半日後に、俺はめでたくホストファミリーに迎えられた。
エドワードという同い年くらいの息子が居て、どうやら彼も地元では悪い意味で有名らしく日本にいた頃の自分と重なって勝手な親近感を覚えた。
俺がエドワードと対面するのはもうしばらく先の事だけど。










やけに懐かしい夢を見たと飛び起きると辺りはどっぷりと暗闇に包まれており、前にも同じような事がなかったかとデジャブを感じる。
時計を見るのも億劫で、自室へ向かうとそのままベッドに倒れ込んだ。うとうとと現実と夢の間で微睡む今の感じが一番心地良い。
このまま朝になって、誰にも引っ掻き回される事なくまた同じような毎日が繰り返される。それでいい。

[ 37/59 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -