躑躅色

自分なりにかなり譲歩して、苦し紛れの条件を提示して交渉が成立した所で電話を切る。
翡翠がここまで俺を心配するのは俺が家族のファンから嫌がらせを受けたりしたのを知って、その事を未だに気にしているんじゃないかと思う。…それにしたって過保護過ぎるとは思うけど。



「もう今さら気にしてないっつうのに。」



自分の部屋まで続く長い廊下を歩きながら脇腹あたりを擦る。今も傷がうっすらと残るそこは痛みこそ忘れたものの、周りの人達の反応を俺は忘れない。



―平凡な癖に




今日投げつけられた言葉とあの日の言葉が重なる。
部屋のソファーに腰を沈めて重たい頭を背凭れに預けた。まるで靄がかかったように思考回路はどんどん不明瞭になっていく。





その時に俺は何を思ったっけ?
憎しみ?悲しみ?
ああもう思い出せないや




薄れ行く記憶を探りかけたけれど、下がる瞼に従って意識を手放した。

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