カクタス
プルルル…と呼び出し音が鳴る。俺は翡翠に掛ける時、この呼び出し音を三回以上聞いたことがない。
彼はいついかなる時にも俺からの電話を取る。撮影中だろうがお構いなしに電話に出て、それがまた絵になるとかで一度俺と通話中のだらしない表情の翡翠が雑誌に載ったこともあったっけか。
―嬉しそうに眦(まなじり)を下げて会話する電話の相手は…―なんて煽り文と一緒に掲載されたもんだから、それはもう何時もの倍以上ファンの人に詰め寄られてなかなか帰れなかった。
「もしもし琥珀!?大丈夫?何もない?」
「一体何があるって言うんだよ」
「可愛い弟が心配で心配で仕事も手につかないよ」
「だからってストーカーのように鬼電してくんな。授業中とか出らんないから」
「何、ストーカーだって!?俺の愛弟に手を出そうなんて不届きな奴が居るなんて…!」
「……はぁ」
本当に翡翠と会話するのは疲れる。毎度毎度どこで会話が噛み合わなくなったのかなんて考え始めたら頭が痛くなるので、気にしない事にしている。
「…分かった。毎日放課後俺から電話するから、それまで電話してくんな。してきたら二度と電話しないから」
「毎日琥珀から電話貰えるなんて、俺一日中ケータイの前で待機してても辛くないね」
万歳三唱しそうな勢いで言い放つのは、何度も言うが実兄であり、決して彼女なんかではない。
世の中の翡翠ファンの人に問う。こんな変態でストーカーでブラコンの三重苦の男のどこが良いのでしょうか。これとルックスを天秤にかけてもまだルックス側に傾くんでしょうか。
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