ボルドー

焦るあまりに退散してきたものの、あんな逃げ方をしたら疚しい事がありますよと言っているようなもんだよな、と廊下を歩きながらだんだん冷静になってきた思考で考える。
今は前髪も切って短くしたし、元々黒かった髪をダークブラウンに染め直した。バレる要素が無いとは言い切れないものの、その確率は物凄く低いはずだ、と自分に言い聞かせて教室に向かう足を早めた。









玄関部分で上履きに履き替えて、今なら少しの遅刻で間に合いそうだと安堵の溜め息を漏らした。遅刻には代わりないが、時間は少ない方が良いに決まってる。
特別クラスを合わせて8クラス×3学年分が校舎に対して垂直に横並びになっているもんだから結構距離がある。しかも自分は1年A組というまたまた一番外側なもんだから、誰かの陰謀だと勘繰りたくなる。



ぶつぶつと文句を言い足元を見ながら歩いていると、下駄箱の端に気力なくだらりと放り出された腕が見えた。幽霊とか科学で証明されないものは信じないタイプだけれど、その手は血の気がなくて蒼白く、少しだけびっくりしてしまった。
そっと下駄箱を覗き込むと、具合悪そうに背を凭れている紅い髪の男が視界に映る。浅く早く繰り返される呼吸の度に小さく揺れる胸部が、男の体調が悪いことを裏付けている。
ネクタイに付けられているタイピンには小さな紅い石が飾られていて、本人の髪とよく似合っている。
何科かは忘れたけど、この紅い石が付いているのは特別クラスの生徒のみ。普通科の生徒は黒曜石のような黒い石が付いていて、ネクタイに入っているストライプは全クラス共通で、本数で学年が判別出来るようになっている。
つまりこの人は特別クラスの2年、先輩ということだ。



こういう場合に知らせるのは校医か?教師か?…名前とか分からないけどどうしよう…。とりあえず学年と特徴伝えたら伝わりそうだよな、特別クラスって少ないし。

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