ムーングレイ

一歩大きく踏み込んでヒュッと風を切る音と共に飛んでくる拳を首を傾げるようにして避ける。瞬発力はあるけど持久力が欠如している俺はあまり派手に避けたりしているとそれだけで激しく体力を消耗してしまう為、極力行動を最小限の範囲に抑える。
ただ、その様子が余裕綽々に見えるようで、余計な顰蹙を買ってしまっていたという事に気付いたのは留学してからだ。




ただ避けるばかりでは勝敗がつくはずもなく、長期戦が元々苦手な事もあって一撃で仕留めてやろうと隙を探るがトップというだけあってなかなかぼろを出さない相手に避ける行為だけで体力を大幅に削いでしまった。
先程から体をあまり動かしてない俺の指先は凄く冷えていて、雨が体温を奪っていっているのがよく分かる。




「いい加減降参したらどうだ」



逃げ回るばかりで手を出さない俺に痺れを切らしたのか半笑いで挑発するように言葉を掛けてきた。
降参してどうなるのか、とその言葉に呆れて挑発に乗るわけではないがそろそろ反撃しようかと地面を一通り見渡してから相手に向き直った。
漸く戦う気を見せた俺に、そうこなくっちゃとやんちゃな子供のような、悪戯っぽい笑みを向けた。



相手のパンチを体後と避け、さっきとはうって変わって前後左右に動きを入れる。
元居た位置から少し下がり、俺の居た場所に相手が立った瞬間、俺にパンチを打たせるように誘い込む。

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