ミモザ

なんの取り柄もない平凡が、そんな中に突っ込んで行くだなんて自殺行為にも程がある、と思う。だけど昔は翡翠と仲があまり良くなく、殴りあい蹴りあい、負傷は当たり前な喧嘩をしていて、トラとしての腕は翡翠によって鍛え上げられたと言っても過言ではない。
家に居場所が無かったから憂さ晴らしをしに行こう、と思ったのが中2病以外の理由だ。…ただその喧嘩の反動でか、翡翠と和解した後はこれでもかというくらいべったりで、過保護な上にブラコンという正に夜中に外出しづらい状況が出来上がってしまった。
しかし引き続き中2病を患っていた俺は、夜に外出するという背徳感にスリルと興奮を覚えて、一緒に寝ようと布団に潜り込んでくる翡翠をのらりくらり交わしては家族が寝静まった後にこっそり自室の窓から抜け出す行為を繰り返した。




サイドに分けていた長い前髪を垂らし、ハロウィンパーティーをした時に使用したメッシュスプレーを振りかけて、真夏なのに分厚いパーカーを羽織りフードを被って自分なりに完全な変装をした。
そして一番気を付けたのは"喋らないこと"。声がハスキーで喋ると一発でバレる恐れがあったから殴られようが蹴られようが呻き声すらも溢さないよう注意を払った。
パーカーのフードなんて掴み合い取っ組み合いしてたら案外直ぐに外れてしまうもんで、「こんなのいつ使うんだよ」なんて邪魔くさいと普段滅多に使用しない適当なボックスに入れておいたことを感謝する日が来るだなんて思ってもみなかった。

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