「中3から…ねぇ」


「今何か言いました?」


ふと目を細めた男がぽつりと小さく呟いた言葉は風に流されて聞き取れなかった。聞き返した言葉も風に攫われたのか、言葉が届いた気配もなくさらさらと風に靡く髪を鬱陶しそうにかきあげる姿でさえ様になっているなんて何と羨ましい事か。
なんて能天気な考えを打ち消すかのように見えた額の傷は、本当にうっすらとしか見えないものの確かに見覚えのある物で、ひやりと一筋嫌な汗が頬を伝ってスラックスに落ちた。








"族狩りのトラ"なんて不本意な通り名を頂いたのは俺が中2の頃で、今になって思うとまさしく名の通りに"中2病"にかかっていたんじゃないかと思うくらいに"強い=かっこいい"なんて自分の中で方程式を成り立たせて夜中にこっそりと家を抜け出して街に繰り出していたそんな時。
地元では主に3つのグループが対立し、夜な夜な喧嘩してはその勢力図を書き換えたりなんかしていた。そいつらの頭を倒す=かっこいい、とまたまた思い違いも甚だしい図式を成立させて一人で軽く見積もっても一グループ50人はいるであろう軍団の中へと息巻いて突っ込んでいった。

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