ブロンド
「英語、得意なんだ?」
食べるのを諦めようかと思った時に背後からいきなり声を掛けられ、びくりと肩を揺らした。柔らかい声色は、少しだけ何を考えているか分からないようにも思えた。
逆光で表情はあまり見えないけれど、背が高くて柔らかそうなストレートの長めの髪は光に透けて金色にも見える。
眩しくて思わず目を眇める様を見て、俺の背後に立つ人物は少し笑ったような気がした。
「一応留学経験がありますので」
目の前に手を翳して影を作って相手を見ようと思うけれど何分今は太陽が真上に来る時刻で、おまけに今日は快晴だ。手で作った影なんかで太刀打ちできるはずもなく、少しだけ俯いた。
「へぇー、すごいね!いつから留学してたの?」
「中3の春からです」
自然と隣に腰を下ろした背の高い人は、座ると俺より少し高いくらいで、足の長さを見せつけられたような気がした…なんて被害妄想もいいとこだ。
手を目の前から退けて横に視線を移すと、たれ目に泣き黒子というこれまた甘いマスクをした美形だった。翡翠とは少し違うタイプのイケメンだ。あいつは野性的な印象を受けるけど、片やこっちはシンデレラとかの物語に出てきそうな品行方正な典型的な王子様って感じ。
―この学園ってイケメン率無駄に高くないですか?
イケメンは見慣れてるけれど、美形アレルギーかと思うほど今まで故意に関わろうとしなかった分接触には慣れていない。そういえば座っている間隔が近いな、と思い気付かれないように反対側へと距離を広げる。
ニコニコと笑っているその表情はやはり物語に出てきそうな王子様そのままで、言葉まんま"絵に描いたような"笑みを浮かべている。
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