二藍

この学園について聞いた所と、自分が見て感じている事に関して、理想とのギャップが大きすぎてどうも頭が付いてこない。
どうして理科室の黒板は上下するんだろうなんて下らない事を考えたり、心の中で般若心経を唱えてみたけれどやはり自分を取り巻く特殊な環境が変わるわけではなく、むしろ冷静になったからこそ浮き彫りになってきた異常さというものを、きっとこれから己の身をもって体験するであろう事だと認識するとぞっとした。















「まぁ、何かあってもこのクラスにいる限りは大丈夫だから安心しなよ。」


クラス外は分かんないけど、と半熟卵が挟まったサンドイッチを頬張りながらフォローになっていないフォローを投げ掛けてくる梼の言葉に一気に気分が沈んだ。
噴水の側に設置されているベンチは静かで陽当たりも良くて、その上風通しも良いというお弁当を食べるのには好条件過ぎるような場所で、折角購買で買ったいかにも美味そうな幕の内弁当(特上)なのに何だか箸が進まない。



「1年A組三坂梼、至急職員室まで来なさい。繰り返す――」


「げ…今の声ってサタンじゃん…」

「あぁ、英語の神代先生だっけ?」


この先生がいつも出す課題のプリントはすごく難しく、英語が苦手じゃない人でも辞書を使いながら二時間集中して問題にとりかかってようやく解けるような難問を出してくる。しかもその正解率が8割を下回ると、今日の梼みたいに呼び出しを食らわされる。
そんな先生の厳しさに神代という名に相応しくない、神の反対=悪魔=サタンでサタンと影で呼ばれているらしい。悪い先生ではないんだろうけど、些か厳しすぎるような気もしないでもない。


「英語でよければ教えてあげるよ」

「本当!?助かるー!とりあえず行ってくるねー」



ひらひらとやる気無さげに振られた手に苦笑いして、殆ど手のつけられていない弁当と時間とにらめっこをして食べるべきか悩んだ。

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