人色

「あれー?琥珀やん!次移動教室やろ?一緒に行かへん?」


教室を出た瞬間、大人数のグループとぶつかりそうになった。その中心にいる男は俺を見つけると人好きのする笑顔を浮かべて独特のイントネーションで話しかけてきた。
また後で、と軽く手を上げて俺達の元へ小走りで来るミッキーの背後から、彼を囲んでいた取り巻きのような男達の視線を痛いほど感じる。
ミッキーも所謂イケメンと称されるような類いの人間だから、取り巻きというよりは親衛隊なのかもしれない。




不可侵条約を破ると制裁、という言葉を思い出して、駆け寄る彼からじりじりと後退する。
よっぽど怪訝な表情を浮かべていたであろう俺を見て、梼は俺を庇うようにずいと前へ出た。




「べリアル様、ご自分の立場を弁えられては如何ですか?」



「そういう三坂君こそ、自分の立場を弁えたらどうや?なぁ、ファヌエル様」



「僕の場合は大丈夫ですよ。琥珀はどう見たってタチには見えないでしょう?ただ、あなたの場合はそうはいかないでしょって事。
それに彼があなたに近づかれる事を望んで居ないのは一目瞭然ですよね?」



梼の背後に匿われて目の前で交わされる聞きなれない言葉を噛み砕くのに時間を食っている間に、わかったらさっさと散れと言わんばかりに鋭い眼光を投げつける梼は視線で人を射殺せるんじゃないだろうか。
俺はエスカレーター式の男子校というものを甘く見すぎていたのかもしれないと、今更ながらに後悔の念が沸き上がってきた。




面を食らっているミッキーを見てふんと再度不機嫌そうに鼻を鳴らしてくるりと踵を返した。
その場から早く立ち去ろうと催促するように右手首を掴まれてぐいぐいと引っ張られる。力が強くてひりひりとする右手に少し眉根を寄せた。

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