藍白
自分の部屋と同じ造りの部屋を後にする。
部屋に戻りながら今回の編入生の情報を整理してみる。
本人の誕生日や身長体重等の基本的な情報は勿論、両親の仕事や補導歴や異性関係の素行調査など、俺のパソコンで出来ないことなどない。
今日一日で交わしたような他愛もない日常会話や言葉の節々から受け取ることのできる情報量というのは決して少なくはない。
こういう情報を仕入れて売る事が俺の"仕事"であり、特待生として迎えられる為の交換条件でもある。情報というのは生き物と一緒で新鮮さが一番。スピード勝負だからこそ今回の編入生の部屋に不法侵入までしたって訳。
主な取引相手は"学校のトップ"の面の生徒会長、"チームのトップ"の面の生徒会長。生徒会長公認だからこそこうしたマスターキーなんかを自分が自由に使える。
部屋に入って真正面にあるパソコンデスクに腰を下ろして、今日仕入れたネタを書き出す。それをまとめてメール添付して、依頼主の生徒会長へと届けて俺の任務は完了。
「しっかしあの編入生、見た目は平凡やけどえらい喧嘩慣れしとるみたいやったなぁ」
普段喧嘩をしない奴が壁なんかを殴ったら拳の部分が内出血のように青くなり腫れる。喧嘩をする奴はそれが毎回起こる為か、拳が潰れている。
男にしては小さめな手には似つかわしくない殴り蛸が僅かながら確認出来た。
体格や筋肉の付き方から見て空手やボクシングをしていたようにも見れないし、ただ単に町で喧嘩してただけのヤンチャ坊主、って事だろう。
「さて、どんな反応が返ってきますかねぇ」
頭の後ろで手を組み、くるくると回転する椅子に背中を預けた。小さく軋む音を聞きながら薄暗い部屋に浮かび上がる液晶の光を見詰める。
これは久々に楽しくなりそうだ、と口許を歪めた。
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