黄色

ウェイターさんが席まで料理を運んでくれる。
今日のオススメを選んだ俺の手元には鰤の照り焼きとお吸い物、蓮根の酢漬け、茶碗蒸しとバランスの良い和食が配膳された。白米からふわりと立ち上る湯気が食欲を誘う。
緊張していたからか喉が異常に乾いている事に今初めて気がついた。
氷の入った烏龍茶のグラスは水滴が浮かび上がっていて、飲もうとするとそれが腕に垂れてきて邪魔くさい。



「「「「「キャー!!!!」」」」」



あまりの大音響に飲んでいた烏龍茶を吹き出しそうになった。
何がどうなって一体この歓声が沸き上がったのか、声をあげると共に立ち上がった生徒たちに視界を阻まれ人垣の向こう側に何があるのか全く分からない。
ただ分かるのはこれが日常茶飯事であろう事と、碌でもない事であろう事。現に俺の向かいに座っているミッキーは鬱陶しそうに眉間に皺を寄せ頬杖をついて視線を逸らしている。



「今日も麗しいお三方」


「眼福にあずかったよ」


「それにしても珍しいよね、お三方が学食なんて」



隣の席の三人組の生徒の会話を盗み聞きした所によると、人垣の向こうにいるのは"お三方"で、"眼福にあずかるような"感じの人で、普段は学食にあまり来ないと言うこと。
見た目こそ平凡だけど、これでも情報処理能力と聴力には少々自信があったりする。それもこれも"トラ"の時代に必要に迫られて培った物だけど。




「ね、ミッキー。お三方って何?」



「お三方言うんは生徒会長、風紀委員長、審判をひっくるめてそう言うとるんや。どいつもこいつも碌でもない奴ばっかやから近寄らん方がええで」


「風紀と生徒会は分かるけど、審判って‥?」


「審判っちゅーのは常に公平な立場におって、風紀や生徒会の権限が間違った方向に効かないようにする、いわば最終的な司令塔的なモンやな。」


「へー。意外とちゃんとしてんのな。」

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