「私は、スカイハイなんだ」

その言葉が飲み込めなくてビルはハァ、と気のない言葉を返した。

とりあえずなんだかのどが渇いた気がしてビルは手元の缶ビールを煽った。
スカイハイといえば最近人気沸騰中のHEROだった気がする。
そう言えば初めて会ったときに落とした紙を拾ったのはNEXTだったか、と思ってから、キースの他の言動が余りにもエキセントリックだったせいで忘れていた、とビルは思った。

ヒーローヒーロー、と頭の中を探る。最近TV番組としての人気があがっている。どうやら担当が変わってあざとくなった、と同僚が言っていた気がする。

人助けで点数を競わせるのがどうにも性に合わなくてビルはみていなかった。

「……風の、NEXT?」

ビルが聞くと、キースはぎくしゃくと頷いた。どうやら一世一代の大告白だったらしいとビルは今更ながらに気づく。

「すごいな」

ビルは素直に言う。たぶん、この男がHEROなら、それは本当に市民の為に、他の誰かの為に能力を全身全霊かけて使ってるのだと思えたから素直にその言葉がでる。

「というかいいのか?僕にそんなことあっけらかんと言っちゃって」

そっちの方が不思議になってビルは聞く。
キースは安心したみたいに笑うと、いいんだ、と二回繰り返して言った。

「ビルだから」

その言葉がなんだかこそばゆくて、ビルはTVをつける。
ちょうど番組がHERO特集でスカイハイが出ていて、ビルは口にあてたビールを吹き出した。

「だ、大丈夫か!?」

驚いたキースが慌てて彼の首にかけてあったタオルを差し出す。それを受け取って拭きながら、大丈夫、と答えた。

内心は結構大丈夫じゃないかもしれない。

テレビの中のヒーローは、おろおろとこちらをみている男とは別人で、それでもやっぱり同じ人物だとわかって。


ビルは、もう少しHEROに興味を持とう、と思った。



多分きっと、今ならもっと、HEROを好きになれるから。


「HERO TV見たよ。すごい活躍してたな。かっこよかった」
そう言って声をかけたビルに、キースがうれしそうに笑うまで、あと少し。

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