「キース」

声をかけるとキースがその裏表のない明るい笑顔をこちらに向ける。太陽みたいだ、ときらきらと光る金髪をみて、ウィリアムは思った。

「先にランチに行こう。たまには外で食べるのも悪くないだろう」

「それがいい」

そう言ったキースに手を引かれる。

「おい、店のあてはあるのか?」

「この間同僚に教えてもらったおいしい店がこっちにあるんだ」

相変わらず強引だ、と思いながらそれも悪くない、とウィリアムは思う。
そういえば、ルームシェアを始めたときもこの男に押し切られたのだ、とウィリアムは思い出す。
不動産屋でばったり会った彼に、押し切られるままにルームシェアをすることになって、自分はヒーローだ、なんて打ち明けられた日には度肝を抜かれたりした。

ウィリアムの周りにはNEXTは居なくて、自分には関係のないものだと思っていたから余計に、誇らしげに自分はNEXTでヒーローだ、と語る男が新鮮だったりもした。

「で、なにを食べさせてくれるんだ?」

手を引くキースに声をかける。キースは人にぶつからないように油断なく視線を配りながらウィリアムと目をあわせて笑う。

「窯焼きピッツァの店。まだ早いからたぶん入れるよ」

「そりゃ楽しみだ」

キースが歯をちらりと見せて笑う。近くの女の子がきゃっと黄色い声を上げた。

スカイハイが顔出しをしていないことに少し感謝する。この笑顔を知っていることに対するちょっとした優越感。
意地が悪いだろうか、と思いながら、今、この笑顔を独り占めしているのが自分だと言うことが、少しだけ嬉しかった。

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