いつものように、いつもの時間に起きて、身支度をする。
いつもの時間に、寮を出るために扉をくぐった。
『おはよう、ルシウス。』
やさしく、耳に響く、その声は。
『はい、ルシウス、今日はマフィンだよ。』
得意げに微笑んで、袋包みを差し出す、その姿は。
通路を、まっすぐ食堂に向かう。
『じゃぁね。ルシウス。』
手を振って、自分の席に掛けていく、その足音は。
本を読もうと、図書館へ向かう。
一冊、手にとって、項を繰る。
どう、判別すべきかわからない、箇所を見つけて、いつものように隣を見た。
『どうしたの?ルシウス?』
真剣味をおびた、その表情は。
気が滅入る気がして、本を元に戻した。
誰も来ない、図書館の隅のスペースに座った。
『愛してるよ、ルシウス。』
まっすぐ、直向なその黒い瞳は。
自分が、自分が、この手で消したのだ。


その事実に、心が向き合うことを拒否する。
頭を抱えてしゃがみこんだ。
このまま、寝てしまおうか。
夢の中なら、彼は、自分の傍にいるだろうか。

いつものように。


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