葛城家には、代々当主のみに伝わる頭首選びの儀式がある。
霊力の高い子供に、其れを封じる封印を掛け、其れを自力で解けたものを、次期当主とする、というものだ。
俺が解いたのは、3歳の時で、最年少だと、先代の頭首がいっていた。
次期当主として、家を離れることには危険が伴う。
いつ、何が起こるか、わかったものじゃない。ほうっておいても問題のない程に、日本も安全な場所ではないのだ。特に、次期頭首であるイツキにとって。

だから、俺は4年の夏に候補者全員に強力な封印の上掛けを行ってきた。
其れを知らない家の者たちは、次期頭首の不在に動揺するのだ。頭首の替えが居ない、と思ってしまうから。
自分は、自分の後継には弟を推すつもりでいる。
彼の霊力は群を抜いている。
唯。自分ほどではないにしろ、だ。
上掛を解く方法などを書いた弟への手紙をしたためながら、考える。
自分が、報いることの出来なかった、葛城家の存続の道を。

隣で、レイリアが寝言を言って、少し驚いて身じろきする。
窓の外に、月は無い。
新月だ。

あと、三日。

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