君が、いなくなっても季節は巡る。

君といた時間をたどるように、君の面影を探してぼくは歩く。

後ろを向いて、ゆっくり、ゆっくりと。



君が蹴躓いてこけたみたいな大きな銀杏はないけれど、銀杏並木の下は長いじゅうたんが出来たみたいになる。
駆け抜けるには十分なくらいの広さだよ。
寒くなったら、空を見上げて雪を待つ。
ふりしきる雪に、君がいないこの世界は明日にも終わるのかもしれない、と一人思う。
そんな妄想を蹴散らす様に朝はやってくる。
まっしろには染まらないけど、朝日に照らされた世界は綺麗で、君にも見せてあげたいと僕は思う。
春になって相変わらず桜は舞うけれど、僕はその下で踊ったりはしない。
桜の花びらは僕の願いをかなえてはくれないから。
夏になったら小川を探すけれど、どれも足をつけて遊びたくなるような色はしていなかった。
蛇口をひねって、たらいの中に透明な水を張って足をつけて、水を少し飛ばす。
君にかけたら君はきっと大人げなく怒るのだろうな、なんて思ってくすくす、と声をあげてわらった。






季節は巡る。



僕は、確かに刻む時の中で君の思い出を抱いて眠る。








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