崩れ落ちそうになる体をなんとか根性で奮い立たせて、銀時は飛び込んできた青年を見た。
 彼は高杉に縋りついて、おいていかないで、と言って泣いた。
 その背中は、戦争の最後に見た彼のものと同じだった。
 高杉はもう助からないだろうと、彼にとどめをさした銀時は知っていた。動かなくなった体を抱きすくめて叫ぶその背中に、何もできず立ち尽くす。
 しばらくして叫ぶこともやめた彼は、突然はじかれたように刀に手を伸ばした。
 慌てて刀を払って、手を掴む。
「死なせてっ――今度は俺を――、晋助と一緒に行かせて―――」
「馬鹿を言うなッ!」
泣き叫ぶ彼を怒鳴りつけて、彼がやけくそで言っているのではないことに気づく。
「あんたには……、銀時は、強いからわからないんだよ……」
 はらはらと涙があとからあとへと頬を伝う。
それが綺麗だと思った。
掴んだ手首は自分が知っているものよりもずっと細かった。
突如決意したように変わった顔に、ハッとして顔を掴んで顎をこじ開ける。
「やめろ!」
 手をねじ込むと、がり、と嫌な音がして手がいたんだ。
「誰か、おい、こいつを止めろ!」
 暴れる体を押さえつけながら叫ぶ。
 呆然とした表情の知った顔がこちらに走ってくるのが見えた。

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