* * *
腕の中に君を閉じ込める。
こんなに近くで君の体温を感じるのはいつ振りだろうか。
君は僕の目を見て、うっすらとその唇をゆがめた。
そばに居たかったんだ、ずっと、ずっと、と思い知らされる気がして、胸が苦しくなる。
ゆっくりと、瞼が落ちて、体の力が抜ける。
抱きしめた体温が失われていくことに、僕はただ泣くしかできなかった。
あの教科書にはさまれた、懐紙の中の特別なはずの花びらは、僕の一番の願い事をかなえてはくれなかった。
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