突然の爆風に煽られて、炎の壁が一瞬にして凪いだ。
その向こうで、二人の男が刀を向け合っていた。
―――勝負は一瞬だった。
鮮やかに、木刀が一閃する。
風に、高杉晋助が左目に巻いている包帯がなびいた。
「しんすけっ!」
引き裂かれるような叫びは、すぐ隣から聞こえたものだった。
いつも、いつも、空虚な闇しか見えなかったその瞳に、何か、別の色が灯っていた。
まだ残る炎をものともせず、彼は飛び込んで行く。
彼の名前を呼ぶ声に、高杉がこちらに気づいて視線をこちらに向けた。
一瞬、高杉はあの余裕と、侮蔑の満ちた憎たらしい笑みではなく、焔が灯るように、笑った。
駆けて行った黒の制服の背中が崩れ落ちる体を受け止める。
「おいて、いかないで…!」
悲痛な叫びが、あたりに響いた。
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