いつも、いつも、彼はここではないどこかを見ていた。

  *   *

高杉め、と憎々しげにつぶやいた土方は片腕を押さえている。火薬の搭載された船が落ちて、あたり一面は火の海だ。
 なんとかして無事を確認しようと集めた隊士もあちこち手傷を負っている。
「高杉、晋助……」
 かえり血か、自分の血なのか、赤黒くこべりついた頬の汚れを隊服の袖で拭いながら彼は何かを考えるようにその名前を反芻して、俯いた。
「ターミナルから見えたのはここです!ここに高杉がいます!」
 山崎は炎の向こうを示した。
「くそっ、どこかから入れないのかッ」
 山崎を怒鳴りつけると山崎は首をすくめて、無理です、と言った。
「今は旦那を信じて待ちましょう。」
 その言葉にあからさまに舌打ちをして、煙草に手を伸ばす。
 くしゃ、とつぶれた煙草をいらいらとした手つきでのばした。
 
     *   *   *


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