「師匠!」

ワゴンを降りた瞬間突然に声がして、目の前から制服の青年が走ってくるのが見えた。

「師匠!黙って置いていくなんてひどいですよ!」

駆け寄ってきた青年はいきなりぼろぼろと涙をこぼしながら、ナルの袖にしがみついた。


「師匠!?」

その呼び方に目を白黒させながら、麻衣とぼーさんはその青年を見た。


青年は鼻水まで流して顔をぐしゃぐしゃにして、もうはなしませんから!とうんざりした様子のナルに訴えている。

少し遅れてワゴンから降りたリンはその様子を見ると、だから言ったでしょう?とナルに言ってからため息をはいた。

そのことによって、その青年はナルとリンの知り合いであることがわかる。

「しかし ……なんで制服を着ているんだ?」

と、ナルが疑問を口にすると、あぁ、といった様子で、青年は胸を張る。

「私服の男が一週間も門の前に立っていたら近所の人に通報されますから、そのせいです。」

名案でしょう!とへらっと笑った青年に、ナルは頭痛をこらえるかのようにこめかみを押さえた。

「着替えてこい・・・」

怒りを抑えるような口調で吐き出された言葉に、青年はきょとんとして、なんでですかー?と聞いた。

「だって、これから潜入するんでしょう?こっちの方が便利じゃないですか!」

そんなことを言ってのけた青年に、ナルはもう一度、着替えてこい、といった。

はいはい、といいながら青年は初めてナル以外の人物に顔を向けた。

そして、その視線がぼーさんをとらえてかたまる。


「・・・あれ?滝川君じゃないの?」


高野山はどったのー?と間延びした声で聞いた青年に、ぼーさんの絶叫が響いた。



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