男に連れられて見たことのない乗り物に乗って(騎獣と言うのだときいた。彼らは恐がってはじめは自分をのせようとしなかった。こんなことはないのに、と男は言っていた。)州城へと行った。見たことのない不思議な風景だった。

騎獣に乗って見た空は青かった。


まじないをかけられた。

精確には解いたのだという。


それからはじめていろんなことを聞いた。

此処が、自分が生まれた世界とは違う世界だということ。


自分は既に、ここに来てから5年をここで過ごしていること。

その間、年をとっていないこと。

もう帰れないということ。



誰かに、別れを告げなくてはならなかった気がした。
(そんな必要はなかった気もした。)

そして、この場で一番偉いと思われる人が、自分に頭を下げた。
(そんなことにはあまり興味はなかった。)

曰く、自分は此処の州城(国のなかの小さな政府らしい)の先代の城主であった人に海客(自分のようによその世界から来た人をそう呼ぶのだとか。)として捕まって、海客を忌み嫌っていたその人は、自分の記憶を混乱させる呪いを掛けて、妓楼に売り飛ばしたらしいのだった。海客であることを悟らせないために、わざわざ仙籍(老いることなく、傷つきづらいらしい。)に入れて、老けることがないと売り込んで。生き地獄を、と。


あまり感慨がわかなかった。

それを言うと、男は憐れみを込めて自分を見た。

呪いは解いたけど、記憶の混乱は治らない。

徐々になおしていくしかない、と言った。


仕事をするのに、何かできることはあるか、と男は聞いた。

自分は覚えていないからわからない、と答えた。


困った顔をして、結局自分は、男の部下だという男の家に住みながら記憶を戻していく療養をすることになった。

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