その日はいつもと違っていた。
女主人が甲高い声で喚いていた。
ざわざわという音と、金属音。
外にいる人は武装しているのだ。数は100を越えている。(なぜか、それがわかった。)
がたがたがた、と言う音がして、自分の扉の前へ武装した人がかけてくる。
起き上がるのが面倒だった。このまま死ねるのならそうしたいと思った。
扉が開いた。
視線だけをそちらにやると、そこにいた「兵士」は自分の想像したものと、随分異なっていた。(何を想像したのかは思い出せなかった。)
先頭にいた男は近づいてきて、手に持っていた剣で自分の手足を繋いでいた鎖を裁った。
意外に簡単に切れるものだと思った。
「君は、自由だ。」
彼はそういった。
首をかしげると、男は困ったような顔をした。
「とりあえず、事情の説明があるから、ついてきて欲しい。……立てるかい?」
説明をくれるのは有り難いと思った。何もわからなかったから。でも自力で立つのは難しかった。昨晩は随分とひどい目にあったから。
ゆるく首を横に振ると、男は頷いて、近くに居た男に、自分を担いでくれるように、頼んだ。
「何処へ行くの?」
そう聞くと男は州城へ、といった。州城とはなんだろうか。首をひねると、彼は悲しそうな顔をして、それも説明する、と言った。
「そこからは空が見えるのかな?」
自分を抱き上げた男に尋ねると、男は笑って、あぁ、勿論、と言った。
楽しみだな。そうつぶやいた。
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